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日中戦争(昭和12年)前から太平洋戦争サイパン島に渡る前までの七年間にわたって交された数百通の大場榮と峯子の往復書簡。戦地と故郷とを行き来するラブレターから当時の様子を垣間見る。 栄のサイパン島での活躍は「太平洋の奇跡~フォックスと呼ばれた男」「タッポーチョ 敵ながら天晴 大場隊の勇戦512日」をご覧ください。
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峯子の実家の近くの天白神社では、
毎年のお祭りに御神楽芝居が上演されます。
歴史古く、江戸時代から継承されているものと言われ、
蒲郡市指定文化財となっています。
まだ独身時代、峯子と栄は
隣同士でこのお芝居を見て、
お互いに触れた膝に
きっとポッと頬を赤らめていたのでしょう。

「お天白様」と言えば、
二人の中では、この神楽芝居の思い出が
脳裏に浮かんだ事と思います。

蜜柑の木蒲郡海岸青い蚊帳などと並ぶ
思い出のキーワードの一つです。
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恋人だった頃、
栄が勤務していた御津南学校で行われた正月(旧正月:注 暦)行事に
峯子を誘った「御津南のおでん」が
お手紙に時折出てきます。
バザーや模擬店が出たような感じですから
きっと地域の行事として
近隣の住民もたくさん出て賑わったことでしょう。
峯子は当時の事を「そぞろに胸の痛くなる思い」と書いています。
何があったのでしょうか?
「今思うと、相当心臓が強かったと感心」もするのです。
栄も「恋は盲目」で、
「夢中で君を案内したが、
今はあんな元気はないの」とも。
ちょっと気になりますね(^▽^)V
長い間離れて暮らしている二人。
時には行き違いから、
手紙紙上で喧嘩もしたりすることがあっても
やはり、強い愛情で結ばれているのですもの。
共通の思い出、
恋人時代は紀元節の蒲郡海岸から始まっているようです。
(これって、映画「太平洋の奇跡」公開の日? なんだか不思議ですね~♪)
清い交際」の恋人の頃を思い出し、
今度お会いできたら、また恋人時代からやり直しましょうと・・・
ずっとずっと想い続けているんですね。
===一部引用===
峯子 16年3月
数年前の紀元節を思い起こして下さいませ。
広い広い海を眺め、白帆を数えた日のあった事を! 
今度お会いした時! 
またあの頃の様な初心な、
そして純な恋人としてお目に掛れる様な気がいたします。
もう一度恋人時代からやりましょうね。
長い別居生活が、貴方を夫と見るより恋人。
お怒りになるかしら。
だってお便りだけで三年間結ばれているんですもの・・・・
たびたび出てくる思い出の中でも、
蜜柑の思い出は、
とても甘美に響きます。
文面の中には、「」マークを伴うことが多く
込められた思いの深さが感じられます。

どの木なのか、今では
弾丸列車のコースに当たり
切られてしまっているようなのですが・・・・

===一部引用===
峯子 16年2月頃

牧山から帰る途中で、
いつぞやの蜜柑畑に廻って見て来ました。
弾丸列車の通る杭がもう入っていました。
麦もまだ伸びないで、
麦畑の真ん中で蜜柑の木のみ数本
寒むざむとしていましたけれど、
峯子の胸には、
数年前の思い出が甦り胸の血潮が熱く湧き上がりました。
あの時の幸せを羨んで見ていたでしょう蜜柑の木は?!
五号というのは、豊橋市内なんですが、
栄が吉田方小学校の教師をしていた頃の官舎で
峯子たちが暮らした新婚時代の「愛の巣」。

しばらく行っていないので、
草で荒れているんじゃないか、
ネズミの棲みかになっていないかと
心配しながら。
でも、峯子は
いまも五号で暮らす人たちに会えば
あの頃が思い出されて
今の寂しさに耐える辛さに、
足が向かないとも言っています。

離れ離れの生活をしてみて
あの頃の幸せをしみじみ感じ
五号の思い出は何度も書かれています。

(こんなにすぐに別れるって分かっていたら)
もっとかわいがっていただくんだったとか
わがままを言ってすみませんでした。
帰っていらしたら、今度はもっと良い妻になるわ、とか
恋人時代の、蒲郡海岸からやり直しいたしましょう・・・・

三河大島は、無人島です。
夏の間だけ渡船が出て
海水浴客を運びます。

勤めに出ている頃は
夏休みの間も峯子は忙しく
なかなか長男を連れては
行けなかった年もありました。
でも、
まだ結婚前でしょうか
家族で行った海水浴で
峯子は
栄の水着姿に惚れこんでいたようですね。
その時の思い出話が、とてもセクシーです。
昔、日本間には、夏蚊帳を吊るための金具が
鴨居のところに付いてましたけど
今でもあります?
あまり蚊帳(かや)なんて見かけませんが
お宅ではお使いですか?

栄のいるところは、暑くて
5月になると、もう
蚊やハエが沢山いてかなわん、と
言っています。
マラリアの危険な蚊もいるような所ですが、
蚊帳がないので、布をかぶって寝ていたそうです。
峯子には、蚊帳の思い出があって
それも、白くて裾の青い蚊帳。
新婚時代の
二人の思い出が
蚊帳の中に詰まっているみたいです。

「青い蚊帳」
いくつかの思い出のキーワードのひとつです。
三谷祭に海へ入る山車は四つ。
上区、西区、北区、中区の
順に並んで控えます。

絢爛豪華な山車。
氏子たちが各地区の伝統に従い
躍ります。

七福神プラスお狐さま

長い毛槍

天白神社は、
春には江戸時代から伝わった御神楽、
秋には大きな山車を出すという
大きなお祭りがあり、
峯子も榮も、
結婚前から祭を楽しみにしています。
宵祭りに髷に結った髪で歩いたり
御神楽を並んで楽しんだり。
天白神社の御神楽は市の指定文化財になっています。)
現在蒲郡市内には、一つも映画館がありませんけれど
戦前、5館くらいあったようで、
そのうち、恵比寿座と三谷日活の
2館も三谷にあったのはオドロキ!

「回想 蒲郡の映画館」
(蒲郡市博物館企画展『蒲郡にも映画館があった』リーフレット)
によれば、三谷の映画館の繁栄は、
機織の女工さんたちによって支えられていたようです。

峯子も、映画館にしばしば出かけています。
でも、戦時下で時局ものばかりになってくると
作品はつまらなくて、昔二人で出掛けた頃を
懐かしい思い出と語っています。

ウォーキングしてたら、あらためて思いましたね。
ひとつの神社のエリア内にも、
複数の神様が祭られていたり
お寺の境内にお稲荷さんの鳥居があったり
もう、神仏混合です。

峯子さんの職場だった学校の隣にも
大きなお寺があって
仏教の記念日には読経の声を聞きながら
日直の間にお手紙を書いています。

JR三河三谷駅は、昭和4年開業で、
昨年、開業80周年記念事業がありました。
隣の蒲郡駅とは1.7km(東海道線で最短)しか離れていないのですが、
渋る鉄道省(現国土交通省)や、
駅開設で仕事を奪われる運送業者の反対を乗り越えてできました。
峯子の父をはじめ地元住民は
開業する20年以上も前から
港近くでの新駅開業を請願していたといいます。
三谷漁港に揚がる水産物や海運で三谷港を経由する石炭、
地場産業の三河木綿などを搬出するために加え、
海岸の眺望のよさを利用する観光客誘致のねらいもあって
できたそうです。

峯子は、この駅から出征する兵士を見送ったり
無念にも戦闘中に倒れた遺骨の出迎えもしました。
兵士はみな若く、
残された妻は幼い子供を抱えたり身重だったりしています。

峯子の手紙から一部引用ーーー
春が訪れて参りました。
御舎弟の一貫様も、二十五日午後十時三十八分、三河三谷駅発の列車で親しい友達三名と御両親様、新家の御父上、三谷の母、私、一弘等に送られて、
元気に首途なさいました。
ーーーー
○○部隊○○隊でご一緒でした三谷町出身の鈴木さんの遺骨が、
明日郷里に声無き凱旋をなさいます。
町葬は十二日でございます。
まだご出征なさいまして、一年に満ちませんのに、
本当にお気の毒に存じます。
奥様は家の前の借家にいられますけれど、
町葬がすめば秋田県の実家の方へお越しなさいますような噂でございます。

峯子の手紙の話題は、非常に多く、1通の手紙の中にも
さまざまな話が出てきます。
その中でも、思い出話を語ることがよくあります。
新婚時代を過ごした五号(豊橋市内)での暮らし、
一緒に楽しんだ
素敵な思い出のあるらしいみかんの山や
そぞろ歩いた蒲郡海岸など。

当時は、三谷は宝飯郡でしたので、蒲郡の海岸といえば、
きっとこの竹島の見える辺りを指したと思います。
沖に浮かぶ船を数えながら散策した思い出の竹島海岸、
その頃も、カモメやトンビやハトも飛んでいたでしょうか。
峯子の実家のある三谷では、
秋に有名なお祭りがあります。
三谷祭は、天下の奇祭として知られていますが
豪華絢爛な山車を海に引き入れる海中渡御(かいちゅうとぎょ)
という神事が特徴です。

八剱神社から若宮神社まで練る山車の順番は、
江戸時代の昔から変わらず決まっていて、
上区(あげく)が最初の山車です。
峯子の町の山車がトップバッターなのです。
大場書簡の中にも、祭りの話題は頻繁に出てきます。
しかし、戦時下ということで、
縮小されて行われた年もあったようですね。

今年の三谷祭りは10月23日(土)・24日(日)、
盛大に行われる予定です。

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大場書簡を読み解く会
性別:
非公開
自己紹介:
2011年2月に出版。
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