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日中戦争(昭和12年)前から太平洋戦争サイパン島に渡る前までの七年間にわたって交された数百通の大場榮と峯子の往復書簡。戦地と故郷とを行き来するラブレターから当時の様子を垣間見る。 栄のサイパン島での活躍は「太平洋の奇跡~フォックスと呼ばれた男」「タッポーチョ 敵ながら天晴 大場隊の勇戦512日」をご覧ください。
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栄は、最初
峯子が学校で働く事を
好ましく思っていなかったようです。
事前に相談が無かった(郵便が遅れたから?)
行き違いがあったことや
峯子が職場が忙しくて手紙が書けないような時
「だから職業婦人は嫌いだ」
女教師という言葉は好きになれん」とか書いています。
教育現場を知っていたからこそ
「まさか最愛の妻を、荒い波風の前にたたせようとは」
思っていなかったからかもしれません。
でも、
教育は大切な仕事だと自らも理解していたでしょうから
峯子が1年勤めあげた頃、
せっかくの機会に恵まれたのだから、
子どもの教育体験を学んで生かせ、と
激励もしています。
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峯子は、手紙や慰問袋と一緒に
子どもや自分の写真をたびたび送っています。
戦地で、敵に包囲されても
栄は、家族の写真に元気付けられます。

===一部引用===
栄 13年4月21日

四十余日間の討伐で「もう駄目だ!」
と観念して、然もこれだけ沢山の敵がいては
凱戦なんてことは夢にも思えないと
悲痛な決心をしていましたが、
一弘やお前の写真を見たら、また急に朗らかになりました。


======

きっと、家族の写真は
ポケットに忍ばせていたのでしょう。
栄が、サイパンに行ってからの活躍を描いた
映画「太平洋の奇跡」でも
そんな兵士のシーンがありましたね。

栄は峯子に負けないくらい子煩悩ですね。
峯子からの手紙に、最愛の長男一弘の話題がないと
一番知りたいのは、子どもの事だと分かっているのか?
と、催促しています。
教育パパというのでしょうか?
峯子への手紙に何度も
甘やかせるな」と書いていますが、
自身でも、子煩悩と認めています。
かわいくて仕方がない様子が見て取れます。

===一部引用===
栄 16年ごろ春

何でもよいから、
又、画を書いたら送らしてくれ。
絵本なんかたくさんやっているかな。
教育材料は
十分与えなくてはいけない。
お前より俺の方が子煩悩かもしれないな。


====
榮は、自分の愛馬「白星」の性格を
どことなく自分に似ていると
形容していますが、
ちょっと短気だったかも。
自分でも謝っていますが
ストレスのたまる軍隊生活の鬱憤
峯子に向けているという部分があったようです。


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栄の人柄・好み
栄は、さっぱりした性格だったのでしょう。
ちょっとした行き違いによる諍いで
厳しい事
を書いても、
叱られた峯子が謝って涙に滲んだ手紙をよこしたり、
2・3通手紙が続けてくると
もう、
「気にするな。
もう何を書いたか忘れている。」
と、こだわらず
すぐに優しい言葉を添えています。

現代のように、すぐ返事が来るわけでもなし、
戦地との郵便事情もあり、
なかなか時間がかかったりしていますから、
前の手紙の返事がまだ届いていなかったり、
トンチンカンだったりもしていたようです。
ですから、栄はたびたび航空便を送っています。
栄は時々釣りを楽しんでいました。
蒲郡では磯釣り、五号では豊川河口近くの川釣りでしょうか?
峯子の弟と一緒に釣りを楽しんだ事もあったようです。
峯子は、三谷港辺りで竿を持つ人を見て、
支那でも釣りができますか?
と尋ねてています。
戦況が落ち着いた頃には
クリーク(網目状の水路)に大きな魚がいて
時には釣りもしたようです。
===一部引用===
栄 4月半ば

いよいよ太公望の時期ですね。
一弘君でも連れて釣りに出かけませんか。
一弘君でもつれて魚釣りに三人で出かけたら、
どんなにか楽しい事と思います。


===引用ここまで===

などと、栄は書いています。
しかし

===一部引用===
栄 16年秋

釣って帰って
調理して食べる相手のない今の自分には
釣りの興味が出ないのは、
やはり太公望の極意を知らないものに見える。


===引用ここまで===
とも。
家庭人としての栄像」が伝わりますね♪ 
春、花の芽吹く頃が、一番好きだった榮。
誕生月だから、ということもあるのでしょうか?
冬の寒さは、満洲の厳しい訓練を思い出すのでしょうか、
辛い冬から解放された暖かさ
待ち望んでいたようです。
春の花の描写は、内地の花を思い出すのか、
榮の手紙にはたびたび出てきます。

===一部引用====

榮 16年3月
「暖花、歌鳥」というが、いよいよ春が来た。
この付近は土地がやせている為か、
比較的草の伸びが遅いが、
◎◎付近はすでに二十センチ位青々と伸び、
菜種が黄色く咲いていかにも春らしい気がする。
もう内地も桜がほころびかけている事と想像する。
学校の桜もつぼみが膨らんで窓越しに見える事と思う。


====

【注】 ◎◎は伏字
地名や軍隊の規模などは、
手紙では軍事機密に当たり、
伏せ字になっています。
榮は、緑色が好きだったようです。
入院中に、
峯子の洋服姿を想像して、
スカートはグリーンがいいとか、
こんな服はいかが?と書いています。

緑は、
春の若芽を思い起こさせるからなのでしょうね。
峯子は、
ずっとずっと
我が家の春を待ち望んでいました。
峯子の手紙には春が素敵に表現されています。



このカテゴリーの記事を詠む
榮の人物・好み
栄は、先生をしていただけあって、
さすが真面目です。
長男の教育方針とか
一時帰国の後、
中国へ戻って、帰国の際に気づいた事など
峯子への要望も
箇条書きにして、いくつも書き綴っています。
もちろん、愛情に満ちたものですが。
峯子の手紙を、ほとんど全部
綴じて保管していたあたり、
真面目というより
几帳面と言った方がいいでしょうか。


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栄の人柄・好み
日中戦争も長く続くと、
白木の箱で帰還する兵士が多くなり、
激しい戦場を思わせます。

栄の竹馬の友が、亡くなった時、
戦場での勇ましかった様子を、
友の武勲として新聞社に投稿しています。
その葬儀の時には、
栄の友の栄誉を讃える文章が
弔辞として引用されたそうです。
名誉を重んじる「武人」としての栄の姿が
このエピソードでも浮かびます。
峯子は、
学校の水泳の授業や農作業で
日に焼ける夏を嫌っています。
夏の嫌いな理由は、
栄が色白な女性が好きだったから?

冗談に、
早く帰って来ないと、
峯子、チョコレート色になってよ

などとも書いています。

でも、栄は
兵隊で色が白いのはいけない。
行軍で、すっかり日に焼けて
黒くなったが、
数日で色が抜けてしまう

というようなことも書いているので、
もともと色白だったらしい(?)ですね。

しとやかで優しい色白の女性が好み
(いつの世でも一緒ですかね?www)
そんな栄さんですが、
でもただ従順なだけがお望みでは無かったようで、
一時帰国の際に、
あなたにおまかせするわ
とばかりの峯子に、
協力者としては物足りないと言っています。
また、紙面には載らなかったかと思いますが、
峯子の家族(母と妹)でなかなか決まらないという時に
ピシャリと言った峯子の一言に
感心した」という栄ですから、
決断力のある女性に魅力を感じていたのかも。
栄は、
昭和9年に徴兵され
豊橋歩兵第十八連隊に配属されました。
昭和10年12月、甲種幹部候補生。
昭和12年12月、少尉となります。
昭和13年4月には、特志将校となり、
昭和14年8月、中尉に昇進。
昭和16年11月、歩兵第18連隊中隊長に就任、200名の命を預かります。
昭和17年より満洲警備につき、
昭和18年3月、歩兵隊では最上階級の大尉に進級。

お手紙は終わっていますが、以後
昭和19年2月、歩兵第十八連隊衛生隊長となり、サイパン島へ。
昭和20年8月7日死亡通知が届きます。
 同年9月30日、死後少佐に特進されましたが、
その後、生存が確認されて取り消しとなっています。
サイパンでの活躍は、映画「太平洋の奇跡」をご覧ください。

栄は武人として、とても優秀な兵士だったことは確かです。
たびたびの戦傷も、勢い余って弾に当たってしまったものですが、
隊長の前向きな姿勢が、隊全体の士気に大いに影響したのでしょう。
十八連隊の中隊長として数々の軍功を納め、武勲を賞されています。
モチベーションを高く持ち続けることが、
どうしてできたのでしょうか。
戦場に臨み、闘志を燃やす姿に
その片鱗を窺い知ることができます。
しかし、
多くの手紙の中では、
夫として・父としての栄が登場します。
そんな姿にも、秘めたるパワーが感じられますでしょうか?

このブログでは、カテゴリー「栄の人柄・好み」
まとめて読むことができます。
栄は、きっと部下にも慕われた上司だったと思います。
周囲の人に対する気配り
花を愛でる優しさ
妻や子どもへの愛情豊かな方だったのですから。
時には拗ねたり妻に当たったりしていますが
長く戦場にいて「心が荒(すさ)んで」いても
峯子の手紙に癒されています。
軍人の世界では、
一度口に出したら曲がっていても変えないというような
部分もあるのですが、
栄は怒りをぶつけて
手紙が届いたり峯子が謝ればすぐ
軍人の世界ではそうはしないんだがと言い訳しつつ
「さっきのは取り消す」とか
「言ったらすぐ忘れるから気にするな」とか。
文面にも、強い事を言う一方で、とりなしたりしている部分が
良く見えます。

「大場栄さん」って、
本当に気遣いの人だったんでしょうね。

栄の手紙の中に、時折自筆の絵が入っています。
子どもや峯子の絵などですが、
鉛筆書きで、結構うまいんじゃない、これ。
とても微笑ましいです。
便箋の余白に、
怪我の場所の解説や、
官舎の部屋の見取り図とかもあったりしました。
本にどのくらい入るのか分かりませんが、
ご紹介したいですね。
栄は、婚家でひとり「よそ者」の峯子を心配します。
自分は血縁だから悪者になっても
お前は父母に気に入られないといけないからと
病気がちで農作業のできない「嫁」の峯子を
かばいます。
父に宛てた手紙に、その辺りがよく表れています。
一方で、
寂しさの為病気になってしまう峯子には
「お前の気持ちは良く分かるが
これもお務めだ、耐えなければいけない。
晴れの凱旋まで待て」と励ましています。
栄が怪我をしたときにも、親兄弟親戚には
大したことないから黙っておけとか
もう治ったと言えとか、
心配をかけまいとしています。
こんな細かい気遣いを戦地に行っても
配慮してるなんて、栄の人柄が偲ばれます。

栄も峯子も、
なかなかに筆の運びが美しく、
四季折々の自然の表現も詩的です。

月夜には、
遠い異国で故郷を想いながら手紙を書く栄に、
「支那の月に、峯子が写っていませんか?」
と峯子は書き送ります。
厳しい冬を超え待ち望んだ春には、
萌え出る若芽の色を愛で
「振るいつきたくなるような芽に
 ビロード色に色づく山肌!」と
春の訪れの喜びを書き表します。

全部は出版分に入らないと思いますが、
少しずつこちらでも紹介していきましょうね。
手紙の中に時々歌の話が出てきます。
「妻恋道中」(好いた女房に三行半を・・・)
とか「人妻椿」とか、
吉良の仁吉の浪花節とか?歌謡曲も歌ったらしい。
当時の軍歌も、出てきます。

ドンジョーンズ作「タッポーチョ」によると、
山を下りてくる時に、栄(歩兵たち)が好きだった
歩兵の本領」を歌いながら行進したとあります。
きっと映画「太平洋の奇跡」でも歌われるのでしょう。
時折、分からない単語がありますが
兵隊さんの気合いが込められた歌詞ですね。

こんな歌詞↓(ウィキペディアより)
作詞:加藤明勝 作曲:永井建子(「小楠公」より)

1)万朶(ばんだ)の桜か襟の色
 花は隅田に嵐吹く
 大和男子(やまとおのこ)と生まれなば
 散兵戔(さんぺいせん)の花と散れ

1)(後に変更された歌詞)
 万朶(ばんだ)の桜か襟の色
 花は吉野に嵐吹く
 大和男子(やまとおのこ)と生まれなば
 散兵戔(さんぺいせん)の花と散れ

どっちでしょうかしら?
2番以下は、
峯子の手紙にも、桜の押し花が入っていましたが、
栄の実家は農業をしていたこともあった故か、
植物や作物の記述が良く出てきます。
支那大陸でも麦が伸びているとか、
支那菊を見ると五号の菊はどうだったとか
桜にも思い出がたくさんあるようです。
お手紙に、時折押し花にして入れていたようですね。
でも、敵陣突入の時に記念に草を・・・って風流??

===一部引用===
栄 13年7月
同封の花、
敵陣地に突入の◎◎敵の壕の中から取って来た無名の草花です。
色こそまずい色をしていますが、
なかなか意義深い記念の草です。
一つは江南の山に咲く桜花、
これは行軍中に初めて山に入って美しい花を見たので、取ってきました。
内地の山桜に似ています。
山州山系の密林の中が美しい。
ほんとは内地の川の様な水の流れに沿って咲いていた桜です。
あんな美しい水はこちらに来て初めて見ました。
やはり山の中ですから、水も美しいのです。
それに水が流れているから、尚感じがよろしい。
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プロフィール
HN:
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性別:
非公開
自己紹介:
2011年2月に出版。
引用文の無断コピーはご遠慮下さい。

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